現代社会において、孤独死は増加傾向にあります。
家族や友人とのつながりが希薄になる中で、一人暮らしの高齢者や社会から孤立した人たちが誰にも看取られずに亡くなり、長い時間気づかれないケースが後を絶ちません。
孤独死が起こると遺体は時間とともに腐敗し、発見が遅れるほど周囲に多大な影響を及ぼすことがあります。
今回は孤独死した遺体がどのように変化していくのか、発見された際の適切な対応手順、そして特殊清掃を専門家に任せるメリットについて詳しく解説します。
孤独死という深刻な問題に理解を深めることで、私たちや周囲の人たちを守るための知識が得られると思います。
孤独死した遺体はどのように変化していくのか?
亡くなったことが長期間にわたり気づかれない孤独死の遺体は、時間の経過とともにさまざまな変化をしていきます。ここでは、孤独死した遺体がどのように変化していくのかを詳しく見ていきます。
消化器系から腐敗が進む
孤独死をして発見までに時間のかかった遺体には、さまざまな変化が起こります。
最初の段階は、胃や腸などの消化器系から始まる腐敗です。
死後、人の免疫機能がなくなると、普段は抑えられている腸の中の細菌が増え始めます。
これらの細菌は、消化器官を分解し、それが腐敗の始まりになるのです。
生きている間は、私たちの身体の中の細菌は免疫力によってコントロールされていますが、死亡するとその力がなくなり、細菌が増えて身体が腐っていきます。
腐敗にともなうガスが発生し体液が流出する 死後、身体の中の腸内にある細菌は遺体の分解を促進し、この過程で発生する腐敗ガスが遺体を膨張させます。 そして皮膚の毛穴が膨張し毛が抜けるとともに突き破ってきます。 このガスは非常に強烈な臭いを放ち、日常生活で感じる臭いとは比べ物にならないほどです。 腐ったチーズや魚介類の臭いに例えられることがありますが、実際にはそれらの比喩をはるかに超えたものです。そのため、現場には特別な防護具が必要になります。 また、遺体の皮膚の裂け目から腐敗ガスとともに体液や血液が流出します。
ハエが集まりウジ虫が湧く
ハエは腐敗した肉や血液をエサとするため、死臭に引き寄せられ、隙間から室内に入り込んできます。
成熟したハエは遺体に卵を産み、それらが孵化すると、ウジ虫が遺体に現れます。
遺体から発する臭いに引き寄せられた多数のハエが卵を産むことで、大量のウジ虫が遺体から湧くのです。
これらの卵は24時間以内に孵化し、ウジ虫は遺体を食べて成長し、成虫になります。
そして、新たな成虫が再び遺体に卵を産むというサイクルが始まるのです。
ハエとウジ虫の数が増えると、周辺の住宅に影響を及ぼす可能性もあります。
遺体に含まれる病原体をハエが運ぶことがあり、最悪の場合、ハエを通じて周囲の人たちが感染症に罹患するリスクがあります。
そのため、孤独死が発見された場合、ハエが集まる原因となる臭いや汚れを迅速に取り除くことが重要です。
孤独死した遺体を発見した際の対応手順
孤独死の現場に遭遇するのは、人生でそう何度もあることではありません。
(実際弊社でも3年この仕事をしておりますが1件遭遇しております。)
もしもそのような状況に直面したら、どのように行動すればよいのか迷うことでしょう。
以下に孤独死した遺体を発見した際の対応手順を説明していきます。
警察に通報する
孤独死の遺体を見つけた場合、まずは警察に通報しましょう。
どんなに善意であっても遺体を動かしたり、部屋の中の物を触ったりすることはしないでください。
孤独死の場合、死因を特定するために警察が現場検証を行うからです。
死因に疑問がある場合、遺体や物品の移動が事件に関連していると見なされる可能性があります。
正確かつ迅速に死因を確認するためにも、発見された現場は触らずにそのまま保つことが重要です。
また、発見時の状況を聞かれますので、自分のやったことを説明しておいた方がいいと思います。
現場検証・検視
まず、現場検証と検視を行います。
死因が自然なものか、それとも何らかの事件に関連しているかを明らかにするためです。
遺体を見つけたのが家族だとしても、孤独死の場合は警察の調査が不可欠となります。
そのため、発見したらすぐに警察に知らせることが大切です。
こうなりますと、作業を進めることはできません。
再開まで早くて1~2日、事件性が絡んでいる場合はそれ以上かかることもあります。
遺族が遺体の確認を行う
現場検証や検視を行い、亡くなった人の死因や身元が判明すると、遺族に連絡されます。
遺族は必要な手続きを踏んで故人との関係を証明し、遺体を確認します。
故人と遺族の関係は、戸籍謄本や保険証などの公的書類で証明され、
血縁が近い順に連絡が行われます。
血縁関係の親等は以下の通りです。
親等 続柄
1親等:父母・子
2親等:兄弟姉妹・祖父母・孫
3親等:曾祖父母・甥姪(兄弟姉妹の子)・伯父伯母(父母の兄弟姉妹)・曾孫
確認が終われば、故人の貴重品や家の鍵など、警察が保管していた物も返却されます。
身元不明の遺体の場合は、警察が専用の保管庫で保管しながらDNA検査を行い、身元を確認する作業を進めます。
特殊清掃を行う専門業者に連絡する
警察によって遺体が運び去られた後、現場の清掃が必要となります。
遺体が長い間その場にあったことで生じる汚れや臭いは、一般的な清掃では対処しきれないものです。
自分で清掃しようとすると、感染症のリスクや心理的なストレスに直面することがあるでしょう。
そこで、特殊清掃を専門とする業者に依頼することが最善の策とされています。
(同時に遺品整理もしたいということもございます。
この場合、部屋に入れる環境にする→遺品整理をする→特殊清掃を仕上げる
という流れになります。)
特殊清掃業者は、遺体の体液や血液、そして残された臭いを効果的に除去するための専門技術と機器を持っており、安全かつ徹底的に清掃を行います。
(私共含む)専門業者に作業を依頼すれば、精神的な負担を軽減しつつ、現場を丁寧に整理することが可能です。
遺体を引き取り火葬し帰郷
孤独死した遺体は、発見された時点ですでに時間が経過していることが多くあります。
そのため、遺体の衛生状態によっては葬儀を省略し、速やかに火葬を行うのが良いとされています。
このような場合、遺族が遺体を引き取るとすぐに火葬を行い、遺骨を持ち帰るのが一般的です。
もし、遺体が比較的良好な状態であれば、通常通りの葬儀を経て火葬することも可能です。
また、孤独死をした人の中には、家族や親族が見つからない場合があります。
なかには家族がいても、さまざまな事情で遺体の引き取りを拒まれるケースも存在します。
その場合、遺体は自治体によって火葬され、遺骨や遺品は一定の期間保管されます。
期間が終わった後、遺骨は無縁塚と呼ばれる共同墓地に安置され供養されることが多いです。
特殊清掃を専門家に任せるメリット
先述のとおり、孤独死した遺体が残した体液や血液、死臭は一般的な清掃では対処が難しいものです。
そのため、専門的な知識と技術を持つ特殊清掃業者に清掃を依頼することをおすすめします。
ここからは、特殊清掃を専門家に任せるメリットについてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
感染症のリスクを避けられる
遺体から分泌される体液や血液には、目に見えない細菌やウイルスが含まれており、感染症のリスクを伴います。
自分で清掃をする場合、これらの細菌やウイルスに対する防護が必要ですが、家庭用の清掃用具で細菌やウイルスを死滅させるのは難しいでしょう。
感染症のリスクを避けるためにも、専門家の手を借りるのが賢明です。
死臭を確実に除去できる
特殊清掃を専門家に任せれば、死臭を確実に除去できます。
孤独死による遺体から出た体液や血液が床や壁に染み込んでしまうと、一般的な清掃用具では完全には落とせないことがあります。臭いが一時的に消えたとしても、時間が経過すると再び現れることも少なくありません。
特殊清掃業者が用いる薬剤でも落としきれないほど中まで染み込んでいる場合は、建材を解体し、交換することで死臭を根本から除去します。(解体作業を行う際には解体届や許可が必要ですので、清掃業者を選ぶ際には、必要な資格を持っているかどうかを事前に確認することが重要です。)
精神的な負担が軽減できる
特殊清掃業者の利用は精神的な負担が軽減できて非常に有効です。
孤独死の現場は衝撃的であり目にするものが心に大きな負担をかけることがあります。
想像を絶するような状況に直面すると、その記憶が長期間心に残り続けることも少なくありません。
特殊清掃を専門家に依頼することで、精神的な負担を避けながら必要な清掃を行えます。
遺品整理を同時に依頼できる可能性がある
孤独死の現場整理は、ただ清掃するだけでなく故人の遺品を整理する作業も行うことがよくあります。
そのような時、清掃も遺品整理も行ってくれる特殊清掃業者に依頼すれば一石二鳥で作業をスムーズに進めることができます。さらに一つの業者に両方を任せることでコストを節約し、連絡や支払いの手間も一つにまとめられるということも利点です。業者選びの際は、清掃サービスだけでなく遺品整理の対応もチェックしておくのもいいと思います。
まとめ
孤独死の遺体を発見したら適切な手順を踏むことが重要
独死の遺体を発見した際には、適切な手順を踏むことが重要です。
その一環として特殊清掃業者への依頼は感染症のリスクを避けるだけでなく精神的な負担を軽減し遺品整理を同時に行うことも可能です。また孤独死の遺体の状態を理解することで、その現実をより深く認識し孤独死の予防につなげることができると思います。